【映画】「救命艇」を観た

映画

DVDで「救命艇」を観ました。前回の「バルカン超特急」に引き続き、ヒッチコック監督の映画です。この映画もかなり面白かったです。

映画の内容について

映画の原題は「Lifeboat」で邦題「救命艇」はストレートに原題を邦訳したものです。このタイトルが示す通り、小さな救命艇という究極の密室とも言える舞台で物語は進んでいきます。

第2次世界大戦の戦時下、大西洋では、商船を含む多くの船がドイツの潜水艦「Uボート」の攻撃を受けて沈没しました。Uボートの活動範囲は、南北アメリカ沿岸にまで及んでいました。

映画の冒頭でも、1隻の客船がドイツのUボートによって撃沈されてしまいます。客船からは、8人の乗員乗客が救命艇で脱出します。そこにUボートの乗員が1人、助けを求めて乗り込んでくるのです。

逃げ場のない救命艇に、自分たちを危機に陥れた張本人である敵国の軍人が、1人乗り込んでくる。映画「救命艇」は、特異な状況で繰り広げられる、緊張感あるサスペンスドラマです。

本作でもヒッチコック監督は一瞬だけ登場します。非常に少ない人物しか登場しないこの映画で、いったいどのようにして、カメオ出演を果たすのか?私は物語の面白さに気を取られて見逃してしまいました(もう一回映画をみて見つけました)。ご覧になる際は、ご注意を。

映画の感想

救命艇には客船から脱出した乗客、乗員8人が乗っています。この8人、立場、信条などがそれぞれ異なっているのですが、その組み合わせが秀逸でした。1つのことを決めるのにも、異論が噴出、まるでまとまりがないのです。結果、各自の抱えている問題までが垣間見えてくる、といった具合に展開する人間ドラマは真実味がありました。

そこに助けを求めて乗り込んでくるUボートの乗組員!そして、この乗組員はいわゆる「ナチスのドイツ兵」とも、他の映画に登場する精悍な海の男とも、全く異なる印象の人物でした。

このドイツ兵、名をウィリーといいますが、彼が実に印象深いのです。遭難した8人の中に、その原因を作った敵国人が紛れ込む、そして、その敵国人がイメージと異なるつかみどころのない人物である。映画を見ていて、ウィリーに翻弄されました。

ウィリーとは何者だったのか?英語を注意深く聞き取ってもらうと、字幕では表現されない事実が浮かび上がってくるように思います。

Uボートが商船に沈められるなんてことがあるのか?

映画は、撃沈された商船の残骸の映像で始まります。そして、Uボートの乗組員の亡骸が!そう、ドイツのUボートもまた撃沈されてしまっているのです。

ところで、当時最新鋭の兵器であるドイツの潜水艦「Uボート」が商船に沈められてしまう、などということがあるのでしょうか?

ドイツのUボートの最大の兵器は、魚雷です。強力な炸薬を搭載した魚雷は、大型の軍艦をも沈め得る恐ろしい兵器でしたが、非常に精密かつ、高価な兵器ともいうことができます。また、一度広大な大西洋に出撃してしまえば、補給は容易ではありませんでした。故に、Uボートは魚雷を節約して使用する傾向がありました。

潜水艦は潜行しているときは見つけにくい代わりに速度が出ません。そのため、潜行した状態で商船を魚雷攻撃し、足が止まったところで浮上して砲撃してとどめを刺す、という攻撃方法が用いられることがあったようです。

また、Uボートによる商船の被害が増えたことに対応して、商船側も武装していました。

今回の映画では、客船にも砲座が設置してあったということでしたので、浮上してとどめを刺しに来たUボートを砲撃で相打ちにした、という状況だったと考えられ、状況設定として十分に説得力があると思います。

映画の冒頭で、整った服装の女の人が一人救命艇に乗っているが・・・

映画は、客船とUボートが激しい砲撃戦を行い、双方が沈没したところから始まります。そして、救命艇には最初は整った服装の女の人が一人乗っています。こんなことがあり得るのか?

状況に違和感を感じたままでは、映画を十分楽しめないと思いますので、ネタバレしない程度に考えてみます。

まず、映画の中で述べられますが、この女の人は、客船の乗組員に助けられて救命艇に搭乗した、ということです。また、沈む船から脱出する際、集まってきた乗客の真ん中に敵の砲弾が命中した、という発言もあります。これらを考慮して、以下のような状況だったと推測します。

  1. 脱出のため、乗客が救命艇のところに集まってくる。
  2. 救命艇が海に降ろされる。
  3. 乗客の移乗が始まり、最初のひとりとして前述の女の人と荷物が載せられる。
  4. Uボートの砲弾が命中。船上は大混乱となる。
  5. 船が傾いて、移動もままならなくなる。そして沈没する。

4の砲弾が命中したとき、救命艇は海上にあり、砲弾の命中場所は乗客が集まっている船上で、高低差があるため、砲弾の被害は救命艇にまでは及ばなかった、ということでいかがでしょう?

乗り物について

あまりあれこれ書くと、ネタバレになってしまうかもしれませんので、代わりにUボートの戦いについて、いくつかご紹介することとします。

(1)ドイツの通商破壊作戦について

第2次世界大戦において、ドイツ海軍はアメリカからイギリスへの物資の補給を遮断するため、各種艦艇による通商破壊作戦を行いました。その主力となったのが潜水艦「Uボート」です。Uボートは広い大西洋に潜み、連合軍の艦船を次々に沈め、その活動はアメリカ沿岸を含む大西洋全域に及んでいました。

(2)商船の武装について

大戦初頭、ドイツによる商船への攻撃は、なし崩し的に激化していきました。この状況を受け、当時海軍大臣であったチャーチルは、英国商船を武装化する、という発表を行いました。従って、当時の商船には、普通に砲座などが設けられていたものと思われます。

(3)Uボートの活動について

Uボートが広い大西洋で十分に活躍するためには、洋上での補給が重要でした。補給には、通常の補給艦のほかに、ミルヒ・ク(乳牛)と呼ばれる補給用の潜水艦や、通商破壊作戦のために商船を武装化した仮装巡洋艦なども用いられました。連合軍はこれらの船を最重要目標として捜索、攻撃を行ったようです。実際、1941年11月には、仮装巡洋艦「アトランティス」が潜水艦「U-126」に燃料補給を行っている際に、イギリス海軍の攻撃を受け、最後は自沈に追い込まれる、といった出来事も起きています。

Uボート7C型

これらの事実を考えても、映画の状況設定は無理がなく、十分にあり得るものだったと思います。違和感のない状況設定が映画の真実味を高め、物語を楽しませるのに一役買っているのではないかと思います。このような状況を踏まえてこの映画を観ると、より楽しめるのではないでしょうか。

「ハセガワ 1/700 Uボート エース パート2」 沈没船も付属していました。

ご覧いただきありがとうございました。映画「救命艇」でした。

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