DVDで「ソラリス」を観ました。SF映画です。SFですが、派手なアクションはなく、心理的な映画でした。こういうのも面白いと思います。
映画の内容について
この映画は、ソラリスという未知の惑星を調査するために設置された宇宙ステーションで起きた事件を描いたものです。SOSのメッセージに応じて、宇宙ステーションに赴いた精神科医ケルビン博士(DVDのパッケージには心理学者と書かれている)も、いやおうなしに事件に巻き込まれていきます。
宇宙ステーションで、ケルビン博士は己の過去と向き合うことになるのです。孤立する宇宙ステーションで発生した危機的状況を、どのように乗り切っていくのかが描かれていきます。
この映画は、ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの小説「Solaris」を原作としています。小説は1961年に発表され、1972年にソ連で映画化されました。今回観たものは、2度目の映画化で、2002年に公開されました。
映画の感想
この映画は、SFという形をとっていますが、人間が過去の過ちで失ったものを取り戻す機会を得たときに、どのような行動をとるのか?ということが描かれているように感じました。人それぞれの事情があり、その人が何を大切にし、どのような選択をするのか、ということがテーマになっているように思いました。
登場人物はそれぞれに特徴があり、ソラリスの危機的な状況での選択も異なる、というところが描かれていて、面白かったです。また、ジェレミー・デイビスが演じるスノーという人物の振る舞いが特徴的で面白かったです。
映画のSF的な要素は、そのための舞台装置を提供しているに過ぎないと感じました。宇宙ステーションや宇宙服は、特に奇抜なデザインはされておらず、どこかで見たような印象でした。変に目立たないので、違和感なく「宇宙に来たんだな」という感じがして、ストーリーに集中することができました。
「ソラリス」の原作小説は読んでいませんでしたが、スタニスワフ・レムの「砂漠の惑星」というSF小説を過去に読んだことがあります。「砂漠の惑星」では、宇宙のとある惑星で、過去に滅んだ異文明の遺物に人間が翻弄される姿が描かれていました。
映画を観て、「結局ソラリスって何なのだ?」という疑問がわいてきました。映画では描かれていない事柄がたくさんあるような気がして、原作の小説を読むことにしました。
原作小説を読んでみた
原作小説では、惑星ソラリスそのものに関して詳しく述べられています。映画では語られなかったことが多く語られており、その存在感は映画に比べて圧倒的なものがありました。とはいえ、それによってソラリスを理解できるかというと、そんなことはなく、むしろ謎が深まるばかりなのです。まさにハードSFという感じで、この小説の最も面白いところではないかと思います。
主役のクリス・ケルビン博士についても、心理描写が詳しく、彼の行動の理由がより明確になっていると感じられました。
映画はおそらく尺の問題もあり、小説の中のすべての要素を盛り込むことは出来なかったのではないかと推察します。SF的な要素は状況を説明するための舞台装置としたうえで、主役のケルビン博士の物語に焦点を当てたストーリー展開となっていました。
ケルビン博士の身に起こる出来事は、基本的に小説と映画で違いはなく、映画は小説を再構築したような構成になっていました。映画におけるそれぞれのセリフの背景にあるものが小説を読むことで明確になったように思います。
映画のラストは小説とは異なった部分があるのですが、映画の尺で話をまとめるためには必要だったのかもしれません。あるいは、小説のままでうまくまとめることもできたかもしれません。この辺りは、観る人によって感想も変わってくるところでしょう。
原作小説の「ソラリス」は、ハヤカワ文庫より発売されています。手元には、1977年初版、日本語タイトルが「ソラリスの陽のもとに」のものがあり、今回はこれを読みました。現在は2015年初版の新訳版が出ています。新訳版は、「ソラリス」という日本語タイトルで発売されています。
映画と小説を比べてみて
映画と小説では、何を描いているかが根本的に異なっているように感じました。映画は人間に焦点が当たっており、人間を描くヒューマンドラマとなっていました。一方で小説は、人間とは根本的に異質な「ソラリス」という存在と、それを何とか理解しようとする人間との関わりについて描かれているように感じました。
小説版のコンセプトは、SF小説として読むにはかなり面白かったのですが、これを映像であらわすのはなかなか難しいかもしれません。説明的になりすぎて、映画として面白いものにならなかったような気がします。それを考えると、今回観た映画はSF映画として上手くまとまっているのではないかと思いました。
以上、「ソラリス」でした。
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